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ロシアのウクライナ侵攻から1月24日で11カ月がたった。自由と独立を守り抜くとのウクライナの決意は揺らいでいない。
民主主義陣営はそれに応えるよう最大限の支援を続けねばならない。
米欧など約50カ国の国防相らが20日、ドイツ西部ラムシュタイン米空軍基地でウクライナ支援国会合を開いた。米国が装甲車や歩兵戦闘車、英国が戦車「チャレンジャー2」の供与を発表するなど支援の拡充が打ち出された。
だが、ウクライナが切望するドイツの主力戦車「レオパルト2」については結論が出なかった。ドイツが二の足を踏んでいる。
米欧はロケット砲や防空システム、歩兵戦闘車などを戦況に応じて供与し、抗戦を支えてきた。ここにきて、米欧の高性能の戦車が求められている。ウクライナが防衛線を守り、敵陣を突破する上で戦車の強度と機動力、戦闘力が必要とされているためだ。
レオパルト2は、欧州の十数カ国が約2千両を保有している。これを少しでも供与すればウクライナには大きな戦力となるが、保有国が供与するにも製造国ドイツの承認を得ねばならない。
ポーランドやフィンランドが供与の意向を示しているが、ドイツは、戦闘の激化やエネルギー供給を頼るロシアとのさらなる関係悪化を懸念して、慎重姿勢を崩していない。
ドイツは第二次大戦で欧州を戦場にし、対ソ戦で膨大な犠牲者を出した。戦後、外国への軍事関与に慎重な世論がある。現代の戦車は精密兵器だ。維持や補修への人的関与も考えると、軽々に決断できない事情があるのだろう。
だが、ドイツは欧州を牽引(けんいん)すべき大国だ。ウクライナ人の流血を止め、領土奪還を支援するためには行動が必要だ。春の融雪期が終わった頃にもロシアが大攻勢をかける可能性が指摘されている。レオパルト2の訓練期間も考慮すれば空費できる時間はない。
ショルツ独首相の姿勢には連立政権の内部からも、少なくとも他国による供与を認めるべきだとの批判が出ている。ウクライナは、あくまでも防衛兵器として戦車が必要なのだと強調している。
20日の支援国会合で戦車供与の議論が本格化したのは前進だ。支援がいっそう確かなものとなるよう、日本も先進7カ国(G7)議長国として力を尽くしたい。
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2023年1月25日付産経新聞【主張】を転載しています
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ドイツのショルツ首相は1月25日、連邦議会で演説し、主力戦車「レオパルト2」14両をウクライナへの軍事支援として供与すると発表した。バイデン米大統領も25日、米主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表した。
ショルツ氏は、今回の決定は「国際社会のパートナーと連携した措置だ」と訴えた。ドイツ政府はレオパルト2の製造国として、ほかの保有国による供与も承認すると表明。ウクライナ兵に対する訓練を早急に開始する方針も示した。
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